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アリステア・マクラウド:冬の犬:書評

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冬の犬 |    データ項目の説明→

書名冬の犬
冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)
冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)中野 恵津子

おすすめ平均
stars素晴らしい短編
stars息づかいが聞こえてきそう
stars生き生きと、みずみずしい、けれど厳しい自然と現実
stars宝物のような作品集。
stars静かで激しい作品

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著者アリステア・マクラウド
書籍種類文学
紀行の種類
旅の種類-
主要テーマ
主要訪問国カナダ
その他訪問国
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カナダ

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「冬の犬」| 読書感想

珠玉の短編

この本はおそらく小説かと思いますが、著者が愛するケープ・ブレトン島を舞台にした短編集です。
「おそらく小説」と書いたのは、この本にはケープ・ブレトン島の成り立ち、民族的な歴史的推移を背景 に著者が紀行的エッセイ的に綴ったように感じたからです。

この本は無論、紀行の範躊ではありませんが、この島を舞台に人間の「生きる」姿 を様々な形で表現しています。
生身の人間が「生きていく」様、それは生、性、家族愛、憎悪、伝統、孤独、悔恨。
人間の裏の姿というより、真の姿を描いているようです。
「生身の人間」と感じとれるのは、それは、この本からは生臭い臭いを感じるからだろう。
獣の血なまぐさい臭い。海の臭い。腐った魚の臭い。
鼻を突く体臭。糞尿のような。死臭のような。 。

だから、良い香りを感じることはない。時には吐き気を催すような、それはあまりにも真実に 近いからか。

人間とは、かくも哀しい存在なのか。
そう感じずにはいられませんでしたが、頑なに自分、そして 伝統を守り、新しい時代、人間とどう向き合うかを悩み、葛藤する「物語」からは哀しさと 、そして静かな勇気を感じ取ることができた。

紀行文の限界と小説

この短編集は紀行文では感じ取ることができない、ある種の実態のない、第六感的 な感覚でのみ感じとることができる、その地の「造形」が四次元的、いや五次元、六次元 的に僕の目の前に現れてくる。

「紀行文とは何たるものや」と常に考えてきました。
世の中のことを知る。それは「事実を知る」こと以外 考えられない。

だから、作り話の「小説」からは、僕が知りたい「情報」は得られないと。早合点していた というか、勘違いしていたのかもしれない。

情報化社会において、僕は単に「情報」を連結して、組み立てようとしていた。小説は情報では無い。 もっと、人間の根幹に迫る何かを紡ぎ上げた、複雑に絡み合った、解く事が不可能な糸のように。
紀行文から、僕の頭に作り上げることができるのは、二次元。そう、それは地図。
うまく行くと、 三次元の空間。もっとうまく行くと時間軸もあわせて四次元。

この短編からは、表現することは難しいけど、説明不可能な要素が組み合わさり、5次元、6次元 といった、視覚的ではなく、意識外の「脳」が自律的に作り上げた世界を僕らに見せてくれている。

ケープ・ブレトン島と僕が同一化していく。
その「地」を感じることを可能にしてくれる。
何か新しい境地を得た気がした。

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